2017-01-02
「家具作りたいおっさん」のひとり言
第6話:やっとはじめられた片付けと、長い長い長い待ち時間。「火事からの5ヶ月のキセキ」
火事から1ヶ月、やっとはじめられた片付け。
火事から1ヶ月はバタバタしてた事もあり、割とすぐ過ぎました。
でもバタバタが少し落ち着いてからはじまった
待つだけの時間。
今までの人生で一番長かったんじゃないかと思うほどの1ヶ月半
そしてその長い時間を心折れずにいられた理由、
今日はその時の事を書きたいと思います。
片付け1日目。本当にありがとうございます
8月の終わり、保険屋さんからやっと現場片付けの許可がおりたので
片付けがはじめられることになりました。
でも、ROOTS FACTORYは火事以降電源も設備ごと外され、
電源を引き込むだけでも結構なお金がかかることが分かり
2階と3階に付けてあったクレーンも焼けてアウトだったので
すべて人力でやらないといけない状態だったんです。
ROOTS FACTORYメンバーは全員で3人、
設備のない状態ではとてもじゃないけど物量に歯が立ちません。
自分たちだけの力ではどうしようもなかったので
9/1、FBにお手伝いをお願いする投稿をしたのでした。
9/1のFBのSOS投稿、本当にありがとうございます
2日前の呼びかけにも関わらず
土曜日も日曜日もたくさんの頼もしい助っ人が来てくださいました。
本当に嬉しかったです。
体力的な事よりももっと、精神的で助けられました。
火事場は焼けた炭と煤で何を触ってもすぐ真っ黒になります。
目には見えないけど空気中に大量に舞っている粉は
マスクをしていても1時間も居たら鼻の中も真っ黒になります。
火事場の独特の匂いは1ヶ月経っても全然消えませんでした。
10年もの間なんどもなんども登った長い長い階段
恐怖の階段w ROOTS FACTORYは3階建てですが5階建ての高さ
重たい荷物を転げ落ちそうになりながら必死に担ぎ上げたり
納品の為に完成した家具をひやひやしながら担ぎ降ろしたり
思い出の詰まったショールーム
「家具を楽しんで見てもらいたい!!」
と頑張って自分たちでつくったショールーム
お気に入りだった3階ショールーム
壁のないところに柱を立てるのに苦労しました。
単菅という鉄パイプで土台を組む家具作りたいおっさん
壁を立ててパテを塗って粉だらけになりました。
壁の板の隙間を埋めるためにパテを塗るんです
壁の塗装ももちろん自分たちでやりました。
壁のペンキは何度塗ったか数え切れません
何度も模様替えをして、壁の色も変えて、家具の写真を撮りました。
レイアウトにはいっつも悩みました
鍋パーティーもしました。
寒さに負けず鍋パーティー
1階の入り口のウッドデッキも最近作り直しました。
入り口を綺麗にしよう計画遂行中
ドアも塗ってイメチェン完了の時はテンション上がりました。
ショールームと共に入り口もイメチェン
イベントもたくさんやりました。
準備に片付けに大変だったけど
遊びに来てくれた皆さんの笑顔がたまらなく嬉しかった。
家具屋でアコースティック「家具アコ」の時
そして何より毎日通った場所である事
毎日毎日、この倉庫のどこかで何かをしてました。
柱の角から床のひび割れひとつまで
たくさんの思い出が詰まった
かけがえのない場所でした。
たった数時間ですべては終わる
たった1日の、それもほんの数時間の火事で
すべては終わってしまいました。
もうこの場所で何か楽しいことをする事はできません。
「燃えた跡でイベントをやったら?」と言ってくれる人もいましたが
1ヶ月経った時に現地で思った感想は、「絶対に無理」でした。
この立ち込める匂いや煤は(ずっといたら健康に確実に悪いです)
遊びに来て良い場所ではなかったのです。
本当にありがたいお手伝い。これですべて順調?
そんな現実を目の当たりにしながら
膨大な量を仕分けして手作業で下に降ろしていく事は
精神的にかなり参ってしまう作業でもありました。
もし全部自分たちでやってたらと思うと・・・
結構ぞっとしますw
たくさんの人が手伝いに来てくれて
「うおー!こりゃ大変だー!!!頑張るぞ
と、言ってくれる声の力強さ
ススがついちゃって全身真っ黒。本当にありがとうございます
真っ黒になりながら笑顔で
「暑いー!!!!良いダイエットやー!!!!!」
と冗談を言ってくれる姿
キラッキラの笑顔が最高です
とんでもなく辛いだけの作業のはずが
みなさんのおかげで、この2日間だけは
めちゃめちゃ楽しい作業になりました。
人の心は本当に不思議です。
気の持ちようで同じ事がここまで変わって見える。
分かってはいたけどここまで実感したのは初めて。
来てくれたみなさんにせめてもの差し入れを思って
お茶やおにぎりを用意したのですが
ファミマのおにぎりを買い占めたのは初めてですw
日が暮れるともう何も見えないので
日暮れと共に作業は終了。
2日間の作業でとりあえず1階が埋まっちゃうくらい降ろせて
どうしても大きなものもなんとか降りたので
なんとかひと区切りつきました。
作業が終わった後は表で打ち上げ。
生ぬるくなったビールがこんなに美味しいなんてって思いました
これだけは焼けようが焦げようが変わりませんw
一旦ガサッとできる作業は終わったので
後はちょこちょこ自分達でやれるかな?
今月中(9月)には片付け終わるかな・・・
とかこの時は楽観的に思っていました。
正真正銘の待ち時間。本当に長かった1ヶ月。
みなさんが手伝いに来てくれて大いにはかどった9/3・4の片付け
そこから一気に片付けは進んで次の物件見つけて
なんなら10月には新工場までいくぞー!!
とか思っていました。その時は。
この時から約1ヶ月、今までで一番苦しい時間がはじまりました。
なにが苦しかったかというと
本当になにもできなかった。
のです。
もっとズバリ言っちゃうと、保険会社からの連絡待ち、でした。
最初の現場調査の待ち時間からはじまり
↓
火災原因の検証(僕が火をつけていないか)
↓
被災物品の内容の確認(僕が提出した資料を確認)
↓
被害額の内容の精査
↓
現地営業所?レベルでの承認(この辺から額はほぼ決まっていました)
↓
本社への調査内容の報告
↓
本社からの確認
↓
本社へ支払い予定保険金額の報告
↓
本社からの確認
↓
入金前の最終確認
↓
本社からの確認
手順の表現の言葉とかは合ってるかわかりません。
保険会社さんから聞いた内容に勝手に名付けてます。
7/31に火事があって、最初の現場調査はすぐでした。
現場検証の時の様子
次の被害額の精査、これに時間がかかるのは仕方ないと覚悟してました。
燃えたもの真っ黒になったもの錆びたもの、
なにがなにやら状態だったのでそれを確認するのは大変な作業、
損害品リストの提出は言われて急いでやりました。
そこまでは火事から1ヶ月も経っていません。
それからの手続きの間、なにもできずただ待つだけ。
保険会社の担当の方に
「どうなってますか?」
と、かけた電話の回数は数10回はあるんじゃないでしょうかw
「もっと先」を追いかけてきたために・・・
少し生々しい話になりますが
ROOTS FACTORYはおかげさまで割と忙しくさせて頂いてましたが
特別儲かってる訳ではありません。
決して安くない家具の金額設定だとは思いますが
その分出ていくお金も決して安くありません。
頂くお金以上の満足をお届けする
それを一番のテーマにしているので
利益や採算性よりも先にずっと「もっと先」を追いかけてきました。
要するに
売上額に対して潤沢な利益がある訳ではなかったんです。
利益よりもお客さんに喜んでもらえたら良い。
本気でそう思ってやってました。
オーダーテーブルのその後を送って頂いた嬉しい写真
利益を上げる気は満々ですよ!
事業立ち上げてる訳ですから。
でもそれはもうちょっと先で考えたら良いと思ってました。
このビジネスモデルをちゃんと確立してから
もっともっとたくさんのお客さんに知ってもらってから
それから利益のことは考えたら良いと。
そういうのもあってどんどん新しい機械とか入れてたんです。
大きな家具メーカーさんからしたら本当に零細な話ですけどねw
そんなこんなでやってきてたので
火事で仕事が止まっちゃったらお金がない。
いや、多少は用意してましたよ。
いざという時の為に。
でも、火事で売り上げは止まったまま
毎月の支払いは変わらず
燃えてしまった納品待ちの家具を再製作する日々
つまり高価な材料費は膨大な作業時間は変わらず
さらに前提だった工房は完全に使えない
そんな状況だったのでお金が使えなかったんです。
火事の片付けも業者さんにお願いして済ます方法もあります。
でも当然に相当なお金がかかっちゃうんですよね。
今だから言っちゃいますが・・・
今だから言っちゃいますが
お客さんの再製作をすべて終えたら
ROOTS FACTORYたたむことも考えてました。
ROOTS FACTORYとして何より一番するべきことは
お客さまへの責任を果たす。
だったからです。
もちろん事業継続する気満々で動いてましたよ。
でももし
事業継続のために再製作をやめる
と
再製作を全うするために事業をやめる
の2択だったとしたら
迷わず後者を選びます。
大切なのは何か?っていう話です。
そういう事情で、金銭的には再製作の為のコストと支払いにしか
予算を割くことはできませんでした。
すぐに見つけたいい感じの物件でしたが
火事後、物件探しはすぐにはじめてましたが
契約はお金の目処がついてからしかできなかったんです。
せっかく見つけた物件も仮押さえのままタイムオーバー
他にお話が来たとの事で見送ったりもしました。
そんな事を何度も繰り返してました。
もちろん金融機関に相談とかは行ってましたけど
保険金がいつ降りるのか?
(過失0なので早々に担当さんから満額出るだろうって事は教えてもらった)
それまでできる事は本当に限られていたんです。
仕事にとって時間はとても大切です。
家具の製作(ルーツファクトリー)の場合だと
10日でできる事を20日かけてやると、
コストは3倍以上になります。
なので少しでも効率よく時間を使いたい。
いつになりますか?
何十回この言葉を言ったか分かりませんw
長い長い1ヶ月間の心の支え
そんな焦燥感とプレッシャーと戦っていた9月の1ヶ月間でしたが
心の支えになったのはみなさんの優しい心でした。
最高の笑顔の二人、なんとこの日初対面ですよ!
火事後すぐにお見舞いに来てくれたみなさん。
忙しいのに場所を貸して頂いた上手工作所の徳田社長。
大事な自分の工場を丸ごとお貸しいただいてる中田さん(愛媛工房)
焦げ臭い真っ黒な火事後を片付けに駆けつけてくれたみなさん。
他にもあたたかい励ましをたくさんいただきました。
初代ルーツファクトリーの古川さんも
実は火事後すぐに頂いた特別な励ましもあったんです。
火事後すぐに香取慎吾さんからお手紙を頂いたんです。
香取慎吾さんからの手紙は本当にびっくりしました
春に下北沢のお店をおじゃマップで紹介して頂いて
その時のことを覚えて頂いてたみたいです。
本当に嬉しかったお手紙で、ものすごく元気をもらいました。
そのお手紙のことは、別のブログにも書いたので
ここに書く代わりにリンクだけ貼っておきます。
焦りと不安で心折れそうになる日々
外はまだ暑く、Tシャツに短パンなのになぜか全然暑くなくて
投げ出したくなる事が無かったとはとても言えません。
でも、そんな時にずっと勇気と元気をくれたのは
みなさんの優しさでした。
嬉しいんだか苦しいんだか分からない状態のまま
「とにかくできることをやろう」と日々を過ごしていました。
いつしか時間は経ち季節が変わっていました。
そして、ついに待ちかねた日がきました。
つづく・・・
「家具作りたいおっさん」阪井
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お正月SP連載ブログ 全12話
〜ROOTS FACTORY火事からの5ヶ月のキセキ〜
2016年7月31日、火災でほとんど全てを失くした絶体絶命のピンチから5ヶ月、たくさんの優しさとご縁に支えられ「ありがとう」では到底足りない感謝の気持ちと万感の思いを込めて綴った5ヶ月間のキセキです。
第1話:え?まさかウチが!?火事は突然に
第2話:開けない夜はない。信じて進む大切さ。
第3話:出会いと別れ。現実、それは過酷で果てしなく、残酷で無慈悲?
第4話:宮崎へ行く理由。どこで誰がなにをするか?
第5話:宮崎から戻ってからの1ヶ月。愛媛に淡路島に授業に谷4に船。
第6話:やっとはじめられた片付けと、長い長い長い待ち時間。
第7話:GAME OVER寸前!やっとバトンをもらえたリレー走者とタニヨンベース
第8話:宮崎からの偶然の連続。とんでもない割烹「和楽」
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第11話:店長浜ちゃんの卒業と一風変わった求人。気持ちの距離を縮めたい。
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