
手離せるモノ、手放せないトキ
モノが手を離れる瞬間に意識を向ける。
これは片付けのコツだそうです。あちこちに物を置きっぱにして探しているうちに本来の目的を忘れ、何気なく手に取った写真とうっかり懐かしい思い出へ浸ってしまうみなさん、同志の西岡です。
わたしは普段、ルーツファクトリーの広報としてあれこれ書き散らかしています。私生活でもまったくお片付けができず、動画を観てみたり本を読んでみたり人に相談したり、いろいろ改善を試みましたがすべてハマりませんでした。
そうこうしているうちに、ついつい集めちゃうかわいいグッズたちが我が家のスペースを侵食していきます…。

そんなわたしが、ある研修講師の方から教わったのが冒頭の言葉です。散らかる理屈としては、「置き場所に戻さない」もしくは「置き場所が決まっていない」からだろうとのことで、なんでも入れていいボックスを部屋に置き、自分の手からモノが離れる瞬間に“判断”をしなさいと言われました。
実践してみたものの、なんでもボックスが溢れて新種の花が咲いただけでした。完。

そもそも
離す
と
放す
って何が違うのだろう?と疑問におもい、調べてみました。教育出版さんのサイトからの引用です。
『「離れる」を使った場合には,「元のものとの距離が広がる」ということに重点が置かれ,「放れる」を使った場合には,「分かれて動いた結果,元の束縛から解放される」という意味に重点が置かれることがわかる。』
それぞれの漢字が使われる熟語から意味を読み解くと、上記のような違いがあるようです。
離す=距離を取る
放す=自由にする
みたいなニュアンスでしょうか。
「手ばなす」ことに着目したきっかけは、先日家具の納品にお伺いしたお客さまとの会話でした。実は、予期せぬトラブルが起き、想定よりも大幅に設置のお時間を頂いたお客さまでもありました。急ピッチで家具作りたいおっさんが作業を進めるなか、お客さまは穏やかにいろいろなお話をしてくださいました。

会話のなかで、「年を重ねていったらね、小さく小さく暮らしていくほうがいいよ」と。奥さまの奏でるピアノが、微かに聞こえてきます。
いまお住まいのお家はご両親から引き継いだそうで、お二人が亡くなられてから大量の家財道具を処分されたとのことでした。
去年の春に亡くなった叔母と、重なるものがありました。叔母はある時に難病を発症し、大好きだった教師という仕事をやめました。どこへ行くにも酸素ボンベが欠かせず、わたしが幼い頃一緒に駆け回って遊んでくれた姿はどこにもありませんでした。愛犬を残して独り亡くなっていた部屋は、ゴミだらけだったそうです。不自由な体、不便な暮らしから解放され小さな骨となって帰ってきた叔母に、心の中で「よかったね」と声をかけました。
残されるひとをおもいながら、この世を離れる準備をする日がわたしにもくるのでしょう。

お話をしていくうちに、読書好きという共通点が発覚。幼少期から毎日のように本を読み漁り、社会人になってからも月1〜2冊は本を読んできたわたしは、目の輝きがマシマシになります。
これまで読んだ本のお話をお聞きしていくと、なんと5,000冊以上の本をお持ちとのこと。とんでもない量です!!!!!本棚何個必要なのかな?とか考えちゃいました(笑)

そのお客さまは、ご自宅の改装が終わったら、蔵に保管しているそれらの本を1日1冊ずつ読み直して捨てていくんだそうです。どうしてこの本を買ったのか、当時どんな学びを得てどんな感情になったのか、思い返しながら手離す、この壮大な計画をとても楽しみにされていると教えていただきました。
「最後の1冊は一体どの本が選ばれるんでしょうね」
「確かに、考えたことなかったな。よし、最後の1冊だけは、読み終えたあとに壁にタイトルを書いておくよ」
「絶対見に行きます!!!」
そんな約束もちゃっかりさせていただき、話題は捨てられる本と捨てられない本へ移ります。
読書好きの方には共感いただける気がするのですが、読み終えても手元に残しておきたい本って存在するんですよね。1ヶ月経っても、3年経っても、たとえ10年読み返していなくてもその感情はあまり変わりません。

読みかけだろうが、「あ、これはもう大丈夫です」と迷いなく処分できる本に思い入れがないわけではありません。ただ、自分にはもう要らない、役目を果たしてくれた、といった気持ちが強く、すんなりお別れできます。逆に手離せない本は、「まだ待って!!」「もう少し寝かせておきたい」「君はいいよ」そんな気持ちにさせられます。
お客さまもこの感覚をお持ちだそうで、説明できないこの現象をお互いに不思議がって終わりました。
話はだいぶ戻りますが、「手ばなす」という行為には、モノとの物理的な距離・感情的な距離が大きく影響するのだろうとおもっています。わたしが手ばなせないモノのなかに、姉から貰ったワンピースがあります。貰ったのは約10年前。大学の入学祝いで贈ってくれました。当時は何度か着ていましたが、体型も好みも変わったいま、おそらく2度と袖を通すことはないんじゃないでしょうか。

なぜ手ばなせないのか。「大学に入りたかったけど入れなかった」姉が贈ってくれたモノだからです。色々な家庭の事情がありました。姉もきっと悔しかったとおもいます。知らないけど、きっといっぱい泣いただろうし、後々やっぱり悲しくなったり怒ったりしてきたとおもいます。そんな姉が、「おめでとう」と祝福の気持ちを込めて届けてくれたのです。捨てられるわけがありません。
世のお姉ちゃん、お兄ちゃんってすごいなって心の底からおもいます。西岡家の姉、兄はこんなにも奔放な妹を育てあげてくれました。感謝です。

さっさと捨てなさい!言うのは簡単です。ゴミ袋に入れるのも簡単です。だけど、手放せない感情に置き場はありません。感情の置き場になっている「モノ」だから、捨てられたら困るのです。だから、リメイクっていいよなっておもいます。この感情を残しておいていいんだ、そう肯定されている気がして。
ワンピースって家具にリメイクできないのかな〜〜〜とか、妄想してます。いい案が浮かぶまでは、しばらくクローゼットの中で休んでてもらうことにします。
みなさまも、感情の置き場が見つからないときは、えいっとモノに預けてみてくださいね。

カレン

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