
工房の景色|小さな小さな椅子が、お仏壇になった日
8月の暑い日。17時で閉まるはずの工房に、まだ灯りがともっている。時刻は18時を回ろうとしていた。普段、大阪の本社へ出勤しているわたしは、たまたま淡路島の事務所でお手伝いをしていた。そろそろ帰ろうと、PCの電源を落としたところで人の気配に気づく。
あー、まだ誰か作業してるのかな?挨拶だけするか、と工房の扉を開ける。
覗き込むと、作業机の上にポツンと小さな白い椅子が置いてあった。背もたれのところがハート型にくり抜かれた、かわいらしい小さな小さな椅子だった。

ルーツファクトリーのリメイク家具製作は、お客さまの思い出とともに進む。だから、婚礼家具や学習机のご相談が特に多く、いまは亡きご家族、お家を巣立ったお子さまの姿を重ねたご依頼がかなりの割合を占める。
この椅子を使っていたお子さまが、大きくなったのかな?一体何に生まれ変わるんだろう!あれこれ想像しながら、わくわくした。設計を担当しているタンちゃんが工房に戻ってきたので、何気なく「この椅子は何になるの?」と尋ねた。

「お仏壇です」
そのひとことで、喉の奥がぎゅっとなった。小さい小さい椅子だ。高さは、大人の膝下にも満たないんじゃないだろうか。
汗だくの家具作りたいおっさんがどこからか戻ってきて、タンちゃんと打ち合わせを始める。
適当なサイズの板を持ってきて、扉に見立ててみたり座面のサイズを測ったり。わたしは、ぼーっと眺めることしかできなかった。

「カレンちゃん、写真お願いします!」と、タンちゃんに社用携帯を渡されて、慌てて撮影をした。胸が苦しかったけど、自分のカメラでも写真を撮らせてもらった。悩んだとき、旅行先、仕事をやめた日、なけなしのお金で買ったX-halfがいつも首からぶら下がっていた。たぶん、このときの感情を忘れたくなかったんだろうとおもう。
製作モードの家具作りたいおっさんは、とてもじゃないが話しかけられないオーラを纏っている。リメイク製作はすべてが一点もの。使う人の癖が残っていて歪んでいたり、傷や汚れが生きた証として刻まれている。量産品であったとしても、誰かの家具である限り世界にひとつしか存在しないのだ。一度触ってしまえば、戻すことができない。だからこそ慎重に、丁寧に、真剣に製作へあたる。

「こうしたら、絶対かわいいよな」
『家具作りたいおっさん』と、タンちゃん。クリエイティブで、経験豊富な2人がスムーズに進めていく。

お仏壇は、今年亡くなられた6歳の娘さまのためのもので、初盆に間に合うように製作が進められていることは後から知った。
悲しみはご家族だけのものだから、ここに関して言及はしないけれど、何気なく工房で見かけたあの小さな椅子が脳裏に浮かぶと胸が苦しくなった。

ありがたいことに、ルーツファクトリーは毎日のように全国から家具製作のご相談・ご依頼をいただく。どのような内容であっても、家具への思い入れや愛情が深く感じられて、なんだかこちらが嬉しくなってしまう。どうにかお力になりたいぞ!なるぞ!なれなかったぞ!(ご予算とか納期とかで、どうしてもというケースがあります)が積み重なっていく。思いをカタチにできる、最高なお仕事だ。
そして「使うひとのためのものづくり」をとても大事にしているから、お客さまが末長く家具とお付き合いできるようなご提案をさせていただいている。だからわたしは、いつだってルーツの家具製作に自信を持てるし、絶対いいものつくりましょう、と心からお伝えできるのだ。

工房から、写真とともに完成連絡が入ったとき、あまりのかわいさに飛び跳ねた。早くお客さま(お母さま)にご連絡しなきゃ!と慌ててPCへ向かった。お電話がすぐに繋がらず、心を落ち着けてLINEでメッセージを打つ。

無事に、お盆前にお客さまのもとへお仏壇を届けることができ、全スタッフがホッとした頃、お母さまから嬉しいご連絡が。

不具合なく、日常を明るくしてくれるお仏壇となっており、感謝しております。とても可愛く、そして本人の私物を活かした、本人らしい物なので。依頼して、本当によかったと感じております。

言葉にならないです。娘さまのことを一心に考えたものづくりが、ご家族さまの日常を照らせているなんて。わたしたちも、本当に本当に嬉しいです。この度はルーツファクトリーにご依頼くださり、ありがとうございました。

カレン

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